子どもの 英語学習と自動化の 重要性 について
第二言語習得は、自然に習得した第一言語習得のプロセスに習って実施される事が望ましい。日本人が日本に留まったまま英語を学ぶ場合、第一言語習得の環境にあって、第二言語習得の環境にないもの、それは自然な目標言語での大量インプットである。「自然な」と言ったのは、会話や読み物の文脈の中で、自らの生活体験や想像の中で第二言語に触れる状態が鍵だから。英語圏の国に数年単位で滞在する環境下ならば「自然な英語での大量インプット」が実現する。だから、やはり第二言語習得の最善の道は、海外で学校などの機関に通って勉強する、もしくは、仕事をする事なのである。
では、日本に留まったまま英語を学ぶ場合には、どうやって「自然な目標言語での大量インプット」をするのか。真っ先に思い浮かぶのは、イマージョン教育。年間費用がほぼ給食費と遠足のバス代だけで、日本語の識字率を100%近くまで引き上げ、毎日30名近くの同世代との豊富な交流がある日本の公教育の恩恵を受けながら学ぶ方法はないだろうか。
実は、第二言語習得については、心理学・言語学の分野から派生して専門的に80年近く世界的に研究が深められている。日本人の研究者もたくさん貢献しており、世界的には珍しいとされる日本語と英語のインターフェースにおける言語習得は研究されている。永年の結果を踏まえると、おおよその筋はできてきた。理解可能(つまり、英語で聞いた時に意味が分かる)な言語アイテムである語彙と文法を最初はインプット、その後に練習により習得し、増やしていく。一つ習得し、その上に次の語彙や文法ルールを積み重ねる。ここでミソとなるのが、習得の順番。語彙も文法も頻出度の高いものから学んでいく。頻出度の高い単語や文法ルールは、英語に触れる中で目にして、その単語や文法を使って、自分がその周辺にあるコミュニケーション内容の理解に努める回数が多い。つまり、知っている内容を生活で練習する回数が単純に増えるから、慣れてくる。この何度も触れて、単語でも文法ルールでも、考えなくてもパッとわかるようになることを自動化と言う。自動化された単語や文法ルールは、エネルギーを使わなくても必要な時に発話したり、書いたりしやすくなるし、時間が経っても思い出せる。ここまでくると、言語学習の頂点、「意図しなくても、一時的な場で適切な言葉を使って円滑に目標言語で相手とコミュニケーションできる」が見えてくる。ここまで来ると、自動化をさらに行なう事のみである。
上杉英会話教室では、まずは英語で聞いた単語や文に慣れる。正確には、英語の単語を構成する音に慣れ、聞いた英語の音声を頭の中で思い浮かべた上で理解する事ができることをイメージして、英語を聞いて大量インプットする。これを実現させるための歌やゲーム、絵本の内容や絵と紐付けながらの絵本読み聞かせを行う。その先に、毎回のレッスンで単語や文法ルールを教室形式で教え、自宅に持ち帰った複数の絵本の聞き読みによって自動化させる。これを地道に繰り返す事で、本人の語彙サイズも成長し、英語を理解できるようになる。だから、アウトプットの機会があった時には、自分の中で自動化させた言語ツールを使って内容を調理して話したり、書いたりすることができる。
もうお分かりだろう。英語の学習を進めさせるエンジンは、自分が昨日学んだ語彙や文法ルールなのだ。また、学んだ語彙や文法が今度は、次に学んで自動化させる語彙や文法ルールを取り込みやすくさせてくれるのだ。そのために、上杉英会話教室教室では、英語の頻出語/頻出ルールと言える、英検5級と4級の単語と文法ルール、そしてDolch Sight Wordsを徹底的に身につけるのだ。覚えるのだ。一回覚えるだけでは自動化されたとは到底言えない。だから、単語の意味や文法ルールを「考えなくても出てくるように」何回も頭に刻み込む。
レッスンのはじめには、今日も英検5級の単語帳を開いて、先生の後に単語を読み上げる生徒達がいる。彼らは、日本に留まりながら、日本の教育の恩恵を受けた上に、第二言語習得の底力を養っている。(文責:マーチー 夏菜)
Nation, I. S. P. (2013). Learning vocabulary in another language (Second Edition). Cambridge University Press.
白井恭弘 (2012). 英語教師のための第二言語習得論入門 = Second language acquisition: An introduction for English language teachers. 大修館書店.